これまでは、病院で亡くなった人の遺体は、故人が住み慣れた自宅に搬送するのが当たり前でした。しかし最近は、「家が狭いから」「マンションだから、ほかの住人の迷惑になる」「高層階で出入りが大変」「近隣に知られたくない」などの理由で、斎場や葬儀場、火葬場の遺体安置室など、自宅以外の場所に搬送し、安置するケースが増えています。
また、死者の増加によって、火葬までの待ち時間が長引いて遺体の保管場所に困る遺族の需要を受け、火葬まで遺体を預かる安置施設「遺体ホテル」の利用者も増えています。
通夜や葬儀を行う斎場に遺体を直接搬送する場合が多くあります。斎場によって搬送方法やその後の対応が異なります。
専用斎場から公民館、団地などの集会所も含みます。この場合は遺体の搬送のみを葬儀社に依頼できます。公共施設なので病院で納棺し、遺体が人目につかないように搬送します。
斎場を所有している葬儀社は、自社斎場が利用できるほか、公営斎場や民間の貸し斎場も利用しています。葬儀社と斎場が同時に決まるので、進行もスムーズで安心につながるでしょう。
火葬までの間、遺体を安置できる民間の遺体安置所。希望すれば搬送も依頼できます。契約内容次第でホテル内での納棺や、身内だけの通夜や葬儀も行えます。火葬場、葬儀場への搬送も可能。遺体ホテルの相場は1泊1~2万円です。
すぐに葬儀ができない、自宅に安置できない場合などには、火葬場併設の霊安室や斎場の安置室を利用できます。この場合、納棺した状態で搬送、安置します。冷蔵保管の場合で公営の火葬場1日1000円、民間斎場8000~2万円が相場。
この場合も搬送のみを葬儀社に依頼できます。ただし菩提寺がある場合は、葬儀社や料理店を指定される場合があるので事前に確認しましょう。
仏式の場合、納棺までの間、遺体は頭を北に向ける「北枕」にして布団に寝かせます。北枕ができないときは西枕にします。布団は薄いもので、シーツは新品か清潔な純白のものを使用し、掛け布団は上下を逆さにかけます。個人の手は胸元で組ませ、そばに数珠を置き、顔には白布をかけます。
枕元には、故人の宗教に基づく「枕飾り」を置きます。枕飾りに必要なものは葬儀社が用意してくれます。そのほかのしきたりや作法は宗派、地域により異なるので、宗教者や葬儀社の指示に従います。
枕飾りは遺体の枕元に置く祭壇です。弔問客が来たときに焼香をしてもらいます。仏式では僧侶に読経してもらう「枕勤め(枕(まくら)経(きょう))」を行いますが、近年は省略されることもあります。
仏式
白木の机、または白い布をかけた台に香炉を、遺体(頭が左)を正面に見て、右側に燭(しょく)台(だい)、左側に花立てを置きます。供え物の枕飯は故人愛用の茶碗にご飯を山盛りにしてよそい、箸を立てた一膳飯や団子を用意します。
白木の机か白い布をかけた机に、水と洗米、塩、お神(み)酒(き)などを供えます。普段の食事と同じような供え物や故人の好物なども供えます。
キリスト教式(カトリック式)キリスト教では枕飾りの習慣はありませんが、日本では白い布をかけた机に十字架や燭台、聖油の壺、水などを供えます。